デジタル回路へのスイッチ入力と静電気対策の実践

デジタル回路へのスイッチ入力と静電気対策の実践

 さて、スイッチ入力の静電気対策について、実際のデバイスを選定するところまで設計してみます。

 静電気対策の重要度について少しお話します。CEマークULマークというのを聞いたことがないでしょうか? 今近くにパソコンや家電製品があればラベルを見てください。ノートパソコンの場合、ACアダプターに貼ってあります。

 そこにはいろいろなマークがあります。中に「CE」や「UL」と書かれたマークが必ずあると思います。これはヨーロッパやアメリカである検査を合格している。というマークです。この「ある検査」とい中に静電気対策が入っています。

 つまり、海外に輸出するような機器を設計・製造するにあたり、必ず静電気対策は行わなくてはならない。という事です。しかも、それを検査しなくてはなりません。

 検査をするにあたり、日本国内で代行してくれる機関が数社あります。ほとんどの企業はその機関に依頼するわけですが、検査の機関なので一般的には製品が完成してから検査をする訳です。そこでいきなり検査をすると、大抵は落ちます。これらの検査は決して甘い物ではありませんので、設計の段階から対策を施さないとまず合格することは無理です。つまり、構想設計や回路設計の段階で静電気対策を行っていない機器は作り直し。という事が起こります。

 通常の機器であれば、IEC61000といいう規格に沿って設計をすれば間違いありません。ただしこの規格は検査の方法を記したもので、静電気対策の方法は記されていません。静電気対策の方法は各社のノウハウによるところが多くなってきています。

 だからといって、IEC61000を読まない。という事もできません。どんな検査をするのかがわかっていないと、対策ができないからです。特にプリント基板を設計する人や筐体を設計する人には読んでほしい規格です。

 前置きが長くなりましたが、静電気対策の基本は入口で遮断することです。機器内部に静電気が入り込むと、それを取り除くのは非常に困難です。

 スイッチ入力は人が手で操作する部分なので、検査時に必ず対象になります。人体モデルでは4kVの静電気で検査を行います。(対象製品の規格にもよります)

 長年電気設計を行っているエンジニアの中に、デバイスでESD対策済みの物を使っているから、静電気対策は特に考えていない。という方がいます。たしかに一般的なデバイスはICのピンにESD対策を施している物が多くなってきています。しかしこれは、IEC61000の対策用ではなく、実装時に故障が起こらない為のもの。と考えた方が良いでしょう。多くのESD対策済みデバイスの仕様を見ても、4kVまで対策されているのは稀です。

 では、実際の設計時における静電気対策を考えてみます。デジタル回路へのスイッチ入力と静電気対策の考え方でのスイッチ入力回路で考えてみます。スイッチ入力の回路にクランプダイオードのVfとCtを記載したものが次の回路図です。

 ダイオードを選定するときに、順方向電圧Vfが小さい物、また接合容量Cjが小さい物を選ぶというアドバイスをしました。実際のデバイスで探してみましょう。

 部品を選定する上で考えなくてはならいパラメータに入手性があります。そこで、秋葉原で買えるものの中から「ROHM社RB751S-40」を選んでみました。

 このデバイスのVfとCtはデータシートで確認することができます。

 Vf=0.37V Ct=2pF です。通常のダイオードですとVf=0.6Vぐらいになってしまいますので、ショットキバリヤダイオードはVfが小さくて使いやすいです。

 D1のVfがわかりましたので、計算してみます。そんな大げさな計算ではありませんが、Vf=0.37Vでダイオードのカソードが3.3Vなので、
 3.3+0.37 = 3.67 (V)
 つまり、スイッチの信号に静電気が乗ったとしても、3.67Vでクリップしてくれる。という事になります。ここがショットキバリアダイオードを採用した理由です。Vfが大きくなるとクリップ電圧も高くなってしまいます。

 D2の場合はアノードが0Vなので、カソードの電圧が-0.37Vでクリップされます。また、Ctは2pFですから、Cとの合成容量にもそれほど影響はなさそうです。たとえば、Cが100pFであれば、合成容量は102pFになるわけですね。

 もし高周波を通すのであれば、Cpはもっと小さくする必要があります。この場合高周波用ESD対策デバイスを使った方が簡単です。

 さて、回路図は設計できたとしても、静電気対策は終わっていません。回路図が描けたなら、次は基板の設計になります。ダイオードを配置する場所がとても重要になります。

 静電気はスイッチに落ちる訳ですから、できる限りその近くにダイオードを配置します。もし、FPGAの直近にダイオードを置いたとすれば、スイッチからダイオードまでの経路に静電気が流れる事になります。4kVも流れると、隣の配線に飛んでしまうかも知れませんし、他のデバイスに飛び火するかも知れません。

 したがって、スイッチの近くでダイオードクリップしてしまうのが良いのです。かといって、基板のスイッチの真下などにダイオードを付けると、今度はダイオードの後に静電気が落ちてしまう危険もあります。一般的にはスイッチ基板の出口や、ある程度スイッチから離れていて、グランドパターンが広いところにダイオードを配置します。